CAST&STAFF

久保 陽香|絵梨子役

くぼ はるか

1987年兵庫県出身。映画やドラマ、CM、舞台など幅広く活躍中。最近の主な出演作は、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(17/大根仁監督)『神さまの轍 Checkpoint of the life』(18/作道雄監督)、TV「相棒season16」第4話(17/EX)、Amazonプライム「日本をゆっくり走ってみたよ ~あの娘のために日本一周~」第6話、TVCM Amazon「クリスマスギフト“Give”」篇など。そして旅番組「はるさんぽ。」 (TSK・BBT・KSS)ではメイン旅人として出演中。主演作『たまゆら』(18/土田ひろかず)が 2月24日より渋谷ユーロスペースで公開。

岡田 篤哉|和馬役

おかだ あつや

2006年大阪府出身。5歳から子役として活動を始める。主な出演作は、NHK連続テレビ「純と愛」(13/NHK)準レギュラー、「わたしを見つけて」(15/NHK)、「あさが来た」(16/NHK)、映画『光』(17/大森立嗣監督)などがある。その他「蟲師〜続章“鈴の音”」「島耕作のアジア新世紀伝」などでは声優にも挑戦している。

似鳥 美貴|花恵役

にとり みき

アマチュア劇団で演技を続ける傍ら、第12回CO2俳優特待生として選出される。趣味は散歩、読書、晩酌。特技は料理。長編映画は本作が初の本格的な出演となる。

藤村 明世|脚本・監督

ふじむら あきよ

1990年東京都生まれ、東京都在住。明治学院大学文学部芸術学科にて映画学を専攻。大学時代に通っていた、映画学校NCWで撮った『彼は月へ行った』が、第36回ぴあフィルムフェスティバルや仙台短篇映画祭2014、第六回下北沢映画祭などに入選し、評価される。
大学卒業後、東宝系の商業映画の制作部や助監督を経て、再び映画監督の道を志す。
4本目の監督作品である『見栄を張る』は、CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)の助成作品であり、初の長編映画となる。本作でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016長編コンペティション部門にてSKIPシティアワード、イタリアのWorking Title Film Festivalにてスペシャルメンションを受賞。
現在、是枝裕和監督製作総指揮のオムニバス映画『十年 日本(仮)』の一篇を制作中。

『見栄を張る』上映+受賞歴

  • SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016 長編コンペティション部門 SKIPシティアワード受賞
  • 第31回高崎映画祭 監督たちの現在ー進取果敢な人々ー(新人監督枠)にて上映
  • Working Title Film Festival 2017(イタリア)審査員特別賞受賞
  • ニッポンコネクション2017(ドイツ)ニッポン・ヴィジョンにて上映
  • 第3回湖畔の映画祭にて上映
  • The Indie Gathering International Film Festival 2017(アメリカ・オハオイ州)にて上映
  • CAMERA JAPAN Festival2017(オランダ)にて上映

藤村明世監督インタビュー

― 「泣き屋」という仕事に着目したきっかけを教えてください。

高校生の時に、朝のワイドショーで特殊な職業をいくつか紹介していて、その中のひとつが「泣き屋」でした。 “サクラ”や“レンタル参列者”のような扱われ方で、人は死ぬときまで周囲の目を気にしなければいけないのか……と衝撃を受けました。その後、国会図書館に行き「泣き屋」を調べると、サクラ的なものとは違い、昔は僧侶のような存在だったとか。死者の魂をあの世に送り、参列者を浄化する役割を担っていたと知り、興味が沸きました。

― そのアイデアを武器にCO2へ応募し、監督にとって初めての長編映画制作がスタートします。

短編「彼は月へ行った」がぴあフィルムフェスティバルに入選した時に、自分の作品と併映された長編を観て、短編とは違う長編の“強さ”を感じたんです。次に撮るなら絶対長編だと思いました。同じ時期にCO2の存在を知り、かねてから気になっていた「泣き屋」の企画を応募して。プレゼンでは、着想の面白さを審査員の方が評価してくださいました。

― アイデアを脚本に落とし込む上で、気を配ったことはなんですか?

最初はヒロインが最初から「泣き屋」を仕事にしている設定でした。でも審査員から、「『泣き屋』を始めたことをきっかけに成長していく方が心境の変化が生まれて面白くなるのでは」との助言を受け、脚本に反映していきました。そして「泣き屋」はもう存在していない職業。突飛なファンタジーにならないよう、生活に密着したリアリティを出すように気を配りました。また、絵梨子は“夢がないOL”という設定だったのですが、脚本を書いていく中で気持ちが乗らなくて……。そこで“自分”に近づけてみようと思ったんです。私自身、大学卒業後から助監督を始め、好きな映画の仕事に就いたものの、同世代の監督が自分の作品で賞を獲っていることにとても焦りました。映画のそばにいるのに夢はどんどん遠ざかり、絵梨子のように見栄を張ったり体裁を気にしたり……。だから、絵梨子にはかなり自分を投影していますね。

― そんなご自身を投影した絵梨子を体現したのが、主演の久保陽香さんです。

久保さんは、以前見た東京海上日動のTVCMで気になっていて、こちらから声をかけさせていただきました。ただオーディションで絞り込んだ数人のうち、久保さんだけが泣けなくて。でも逆にそれが絵梨子らしかったし、泣けなくても構わないと思えるほど、華があって凛とした久保さんに惚れこんでしまったんです。当初絵梨子はもっと男らしくサバサバしたキャラでしたが、久保さんに合わせ、脚本を修正していきました。撮影中の久保さんは、愛らしい魅力はそのままに“座長”としてドシッと構えていました。こちらの意図もすべて汲み取ってお芝居に反映してくださって、とても頼もしかったです。

― ロケ地となった和歌山の美しい景色も印象的でした。

脚本執筆中から、田舎の村にポツンと家があるビジュアルが思い浮かんでいました。そこで知り合いのプロデューサーさんからお薦めされたのが、和歌山県の海南市。実際に足を運んでみると、まさに「泣き屋」が実在しているかのような美しい風景が広がっていました。街の方々もみなさん温かく迎え入れてくださり、感謝しています。絵梨子の実家のロケをしたのは、普段は別荘として使われている場所。リビングはもともと物置だったのですが、美術スタッフさんが劇中の状態に作り込んでくれました。

― スーパーラビットビールや絵梨子の後輩が表紙を飾る雑誌など、小道具へのこだわりも随所に感じられます。

もともと“ありそうでない”架空のアイテムを考えるのが好きなんですよね。私自身、相手の洋服より持ち物が気になるタイプ。というのも、持ち物ってその人の個性が出ると思うんです。また、撮影前に、好きな映画やアーティスト、恋人とどう出会ったかに至るまで、絵梨子のプロフィールを作りました。それを元に、美術スタッフさんが絵梨子の部屋のアイテムを揃えていきました。ソニック・ユースのポスターは、恋人である翔の影響という設定です。

― 絵梨子の好きなものといえば、カップ焼きそばにしょうがを入れて食べるのも斬新でした。

大学のときに、何にでも調味料をかけて食べる友達がいて。同じ味が続くと飽きちゃうというか、何か入れないと心が落ち着かないんでしょうね。さっきの持ち物同様、食べるものや食べ方にも人のアイデンティティが表れる。きっと絵梨子も気に入って食べているものがあるはず。そう考えたときに、カップ焼きそばにしょうがの組み合わせが思い浮かびました。ただ実は撮影直前まで試したことがなくて……。久保さんに「おいしいんですか?」と聞かれ、あわてて試食しました。想像通りの味でした(笑)。

― スーパーで再会した同級生や元恋人との会話がリアルでしたが、監督自身は東京出身ですよね。

東京生まれ東京育ちなので、“田舎に帰る”ということに昔から憧れていました。久しぶりに同級生と会い、お互いの環境を楽しく報告し合うような、どちらかと言うとポジティブなイメージを抱いていて。脚本にもその憧れの気持ちが出ていたようで、スタッフから「地元に帰るのは、そんなきれいごとじゃない」と指摘されました。その後、地方出身の友達に取材させてもらい、田舎独特の閉塞感やしがらみを脚本に反映していきました。そして、夢を追って田舎を飛び出した絵梨子のダメさと、田舎で地に足のついた生活を送る同世代とのギャップも描こうと思いました。

― “女優”という存在にはどんなイメージを持たれていますか。

私、子どもの頃にお芝居を習っていたんです。「大好きな映画の中に入ってみたい」と無邪気に思っていました。でも中学生のとき、学園ものの映画撮影にエキストラで参加したんですが、メインキャストのみなさんのオーラに圧倒されてしまって。年がそんなに違わないのに、カメラの前に立つ人ってこんなにすごいのか、と勝手にひとりで挫折しましたね(笑)。私にとっての“女優さん”とは、カメラの前に立つだけでも恥ずかしさでパニックになりそうなのに、そんな気持ちを全て取っ払って、“自分とは違う人間”を生きる人たち。一度は志したことがあるだけに、羨ましさと尊敬の気持ちがあります。久保さんもオーディションでは泣けなかったのに、本番ではスッと涙を流していて。現場でもスイッチが入ったのを感じました。

― これからどんな監督を目指していきたいですか。

人生経験が浅く、今はまだ子どもや同世代の女性など自分の知っている世界しか描けていません。今後はいろんな人と出会って、自分とは違う価値観をどんどん吸収していきたいですね。そしていつか、社会問題も扱ってみたいです。製作中の『十年 日本(仮)』では、環境汚染問題の暗喩に挑戦しました。ドラマも社会派映画も両方描ける、是枝裕和監督のような作品づくりが理想です。