STORY

「あの監督、ちゃんと私の芝居見れてないんですよね」

28歳の吉岡絵梨子は、周囲には“女優”として見栄を張りながらも、実際にはカフェのアルバイトで生計を立てる日々。これまで目立った仕事といえば、ウサギの着ぐるみを着て踊った“スーパーラビットビール”のCM出演のみ。映画のオーディションを受けるも満足な芝居ができず、その苛立ちを監督のせいにしてやり過ごす絵梨子。私生活では、売れないお笑い芸人の翔と半同棲中。公私ともにパッとしない東京生活に悶々としながらも、女優として成功する夢をあきらめきれないでいた。

「私が和馬の面倒をみます!」

そんなある日、和歌山に暮らす姉の由紀子が交通事故で突然亡くなったとの連絡が。5年ぶりに帰郷した絵梨子を待っていたのは、長らく疎遠だった親戚からの冷たい目線、そしてシングルマザーだった姉が遺したひとり息子、和馬だった。由紀子の葬儀が終わり、悲しみも癒えないうちから和馬の親権をどうするか話し合う親戚たち。いたたまれなくなった絵梨子は、家事もろくにできない自分を顧みず、つい「私が面倒をみます」と見栄を張ってしまう。

「お金を払ってまで泣いてもらうなんて……」

葬式から数日たち、姉と一緒に仕事をしていたという佐久間花恵が訪ねてくる。姉がどんな仕事をしていたかを尋ねる絵梨子に対し、花恵はある葬式会場に喪服姿で来るよう指示。そこで絵梨子が目にしたのは、見ず知らずの故人の葬儀で涙を流す花恵の姿だった。彼女が泣き始めた途端、悲しみが波及するように遺族たちも次々と泣き始める。この仕事、参列者の涙を誘う「泣き屋」というらしい。絵梨子は女優ならば簡単にできると思い「泣き屋」を始めてみるのだが、いざ葬式ではなかなか涙が出てこない。やがて絵梨子は、この仕事の真の役割を知ることとなる。